PICK UP!シネマほぼ百発百中!Gun観しやがれ!:第25回『万引き家族』

2018年06月04日

エンタメ 映画

「シネマほぼ百発百中!Gun観しやがれ!」

  ~狙った映画はだいたい外さないシネマヒットマンが送る怒濤の銀幕見聞録~

第25回『万引き家族』

監督:是枝裕和『誰も知らない』『そして父になる』
出演
リリー・フランキー 『凶悪』
安藤サクラ 『その夜の侍』
松岡茉優 『勝手に震えてろ』
樹木希林 『歩いても歩いても』

第71回カンヌ映画祭パルム・ドール受賞

2018年6月8日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
2018年/日本映画
上映時間:120分
配給:ギャガ
■公式サイト: gaga.ne.jp/manbiki-kazoku

(C) 2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

【解説】犯罪で繋がった“家族”の強く切ない絆に世界が震えた

まず、当サイトで銃もアクションも登場しない作品をご紹介することは異例であるが、それほどの強い衝撃と感動を約束する作品なので多くの方にご覧頂きたく敢えて取り上げることをご容赦願いたい。

『誰も知らない』『そして父になる』などの代表作において、常に“家族”の本質を言及してきた是枝裕和監督の集大成というべき最新作『万引き家族』が遂に公開となる。本作は第71回カンヌ国際映画祭にて最高賞のパルム・ドールに輝き、日本映画としては1997年の今村昌平監督作『うなぎ』以来となる快挙を成し遂げたことも話題となった。

貧困と格差が拡大の一途を辿る現在の日本。犯罪で生計を立てる下町の一家にある日、小さな新入りがやって来た。どうしようもない程の反社会的コミュニティでありながら、常に笑いが絶えず暖かい絆で結ばれている一家に新たな絆が生まれるが、その幸せは追い詰められた小さな良心により綻んでいこうとしていた・・・。

出演は俳優として円熟期に入ったリリー・フランキー、「女優が嫉妬し称賛する女優」として、本作でも恐るべき存在感を見せる安藤サクラ、若手女優の中でも一歩抜きんでた実力を発揮する松岡茉優、是枝作品の常連で日本映画界の至宝である樹木希林。そして、是枝作品に欠かせない“恐るべき子供たち”として、城桧吏、佐々木みゆ、という2人の素晴らしき子役が物語を牽引する。

パルム・ドール受賞という話題性を抜きにしても、現在の日本において目を反らすことが出来ない重いテーマと家族の本質について痛いほどに切り込んだ衝撃作である。

【物語】社会の底辺で暮らす万引き一家に、ある日新しい絆が訪れた

父・治とその息子・祥太は街角のスーパーで鮮やかな連係プレーで万引きを行った。それは日常の出来事であるかのようにさりげなく、そしてそれは彼らの生業であった。

厳しい寒さに震えながら帰路につく2人の目に飛び込んできたのは、団地の1階で震える小さな女の子だった。母親から閉め出されたらしいのを以前も見かけていた治は彼女を放っておけず、高層マンションの谷間に取り残された平屋に連れ帰る。

そこは治の年老いた母・初枝の家で、妻の信代、彼女の妹の亜紀が同居していた。「誘拐だ」「早く返しにいって」という信代や亜紀に諭される治。しかし、体中に傷跡がある「ゆり」と名乗る少女の家庭環境の一端をのぞいた信代もまた、自分の過去に似たものを感じて小さな新入りを家族として受け入れる。

犯罪に手を染めながらも暖かく強い絆で結ばれ、笑いの絶えない一家。心を閉ざしていたゆりも徐々に本来の子供らしい無邪気さを取り戻していく。

しかし、ある日起こった事件により、家族それぞれの秘密が次々に明らかになっていく・・・。

【レビュー】血よりも濃い“絆”はモラルを超えて

時に胸が痛む冷徹な現実を織り交ぜながら、家族の絆とその本質を描き続ける是枝監督が本作を着想したのは、今から2年前に起きた年金詐欺事件だったという。事件を起こした家族は確かに罪を犯し、その言葉は嘘と捉えられて仕方ないものであったが、彼らの家族としての繋がりまでを糾弾することが出来るだろうか?

本作も中盤までは、万引きの描写を除けば「貧しいながらも明るい我が家」を画に描いたようなほのぼのとした家族映画であり、むしろ彼らを理想の家族として羨望の眼差しでスクリーンを見つめ、その一員になりたいという願望すら生まれてくる。

本作の治たちにすれば、生きるための、愛する家族を守るための術が犯罪だったというのが回答かも知れない、いや、もうむしろ犯罪という感覚すら無くなっているかもしれない。しかし勘違いしないで頂きたいのは本作が犯罪を助長するものでも、犯罪の原因=貧困という短絡的な言い訳をするものではないということである。ただ、「正しいこと」が行われることでこれほど胸が苦しくなる作品は中々お目にかかれないだろう。それこそが是枝監督の狙い、ということなのか。

キャストのアンサンブルが見事であるが、中でも安藤サクラの「信代」としての人生を生きる様は完全に演技というものを超越しており、観客は言葉を失うしかないだろう。

傷ついた心が共鳴した者たちが織りなす血より濃い絆に心を掻き乱される渾身の傑作である。

 

投稿者:ToyGun.jp編集部