PICK UP!【個人的Gun備忘録コラム】初めて買った44マグナムは2インチほど長かった

2018年02月23日

コラム 企画

「44マグナム」と聞いてトキめかない男子がいるだろうか。

まあ、いささか偏見めいた書き出しではあるが『ダーティハリー』を体験した男はもちろん、アクション映画やドラマ、モデルガンに憧れた男性諸氏には一種のキラーワードであることは間違いない。かくいう筆者もその1人である。

このサイトをご覧頂いている方なら説明不要であるが、ハリー刑事の使用する銃の名称は「S&W M29」であり、「44マグナム」はあくまで弾薬の名称である。しかしながら「44マグナム」と聞いて真っ先にこの銃が脳裏に浮かぶほどハリーさんの影響は強大であった。

その影響はテレビの洋画劇場で初めてハリーを体験した中学時代の筆者にも当然の如く及んだ。正確に言うと先に「ダーティハリー2」を観ており、オープニングタイトルで赤をバックに映し出される44マグナム(M29)の迫力に心を鷲掴みにされたのだ。そして散々にカットされたテレビ編集版の『2』を見終えた私が即座に思ったことはただひとつ。

「マグナムのモデルガンが欲しい」

これはパブロフの犬と同様の条件反射的欲求だろう。

しかしながら、少ない小遣いで思春期を乗り切らねばならない14歳に本格的なモデルガンは高嶺の花である。だが、当時はそんなに裕福ではない家庭で育った少年に一抹の希望を与えてくれるメーカーが存在した。LSと呼ばれるそのメーカーからプラキットのモデルガンである。プラモデルだから当然軽く、一応可動はするもののもちろん発火はできない。その分廉価で中学生の小遣いでも頑張れば買える商品であった。

数週間後。お菓子や本を我慢して死守した1500円を手に家から歩いて5分ほどのオモチャ屋に向かう。プラモコーナーに並ぶラインナップの中から44マグナムを探していると、やたら銃身が長い「44マグナム ハンティングスペシャル」なるものがあった(後にこれが実在しない12インチのM29と知る)。しかし、ハリーはこんなに長いのを使っていない。そしてようやく欲しいサイズの44マグナムを見つけた。パッケージには銃を撃つ刑事と橋の下を走る男のイラスト。喜び勇んで購入し、2日間掛けて組み立てた。

鏡の前で目を細めてハリーになりきった。アジアの少年の手に余る大型拳銃はその日から宝物となった。当時はまだビデオすら普及しておらず、テレビで観たハリーの記憶を手繰り寄せながらその世界に浸る日々が続いた。

そして、遂に第1作「ダーティハリー」がテレビで放送される日が来た。興奮を押さえきれず44マグナムを手にブラウン管に齧り付くように見入った。傑作名高い『1』の完成度の高さとハリーのカッコ良さに惹かれながらも、何故か拭いきれない違和感が付きまとった。

ハリーの44マグナムが思ってたより短いのである。

そして、自分が手にしている44マグナムが異様に長く見えた。気のせいではなかった。

映画は堪能したが、もやもやした気持ちを抱えたまま翌週学校へ。ハリーの話題で盛り上がりながら、友人の1人と放課後お互い持っているマグナム見せ合いっこすることにした。

そして、一旦家に戻りマグナムをカバンに入れ友人宅へ。そこで見たものは友人が持つコクサイの本格的キットモデルガンの44マグナムで、その重量感とメカニズムに魅入られ嫉妬を覚えた。そして長さがテレビで観たハリーのマグナムと同じなのだ・・・。敗北感を覚えながら自分のマグナムを見せると友人がひとこと。

「お前、それ8インチやぞ。ハリーのはこの6インチや」

経済力の差と自分の未熟さに打ちのめされ、その日はどうやって家に帰ったか覚えていない。

さらに追い打ちを掛けるような事実が発覚。数日後、例のオモチャ屋に立ち寄った際にハリーを模倣した思われるパッケージのLS製44マグナム6インチモデルを発見してしまったのだ。

「こっちやったんか・・・」

しかし、買い直すほどの財力がなかった筆者はただ後悔の念に押し潰されるだけであった。

そこでハリーになりたい筆者が取った衝動的な行動が

「長けりゃ切ればいいじゃない」

工作用ノコで「大体の6インチ」を目測し、銃身をカットしたのだ。そしてフロントサイトをやや不格好に切り、付け直し銃口の切り口に雑にヤスリをかけた。

念願のハリーの6インチモデル誕生である。これでようやくハリーになれる。

その後、ハリーの3作目がテレビ放映されることを待ったが中々オンエアされず月日が流れた。

その頃にはハリー以外の様々な映画にも興味を持つようになった。そんな中、お気に入りとなったのが松田優作の「遊戯シリーズ」、ロバート・ギンティの「エクスタミネーター」、そしてロバート・デ・ニーロの「タクシードライバー」は、さらに思春期をこじらせ鬱屈とした日々を送っていた筆者の心に突き刺さった。

そして、ここで筆者は新たな後悔に身をよじらせることとなる。賢明な方ならもうお分かりであろう。

これらの作品に登場したのが44マグナム(M29)の8インチモデルであることを・・・。

【教訓】

青春と切った銃身はもう二度と帰らない。

 

投稿者:ToyGun.jp編集部