PICK UP!【このGunに歴史あり】第4回・勇者グロックとポリマーフレームピストルたち:後編

2016年07月06日

企画

G19_blk_grip満を持してのアメリカ進出でまさかの炎上騒動

【このGunに歴史あり】第3回・勇者グロックとポリマーフレームピストルたち:前編 の続きとなります。

自国オーストリア、そしてヨーロッパで成功を収めたグロック社の社長、ガストン・グロックと『グロック17』の次なる野望は、世界最大の銃器マーケットであるアメリカでした。

実はグロックの評判を耳に入れたアメリカの銃器輸入ディーラーから契約打診が多数あり、正に引く手あまたの状態だったのですが、ガストン氏のアメリカ進出の目的は代理店経由ではなく直系子会社の創設だったのです。

「アメリカに帝国作っちゃる!!」

もはや勢いという名の車で全速力で突っ走るガストン氏に不可能という文字はありません。まずは足掛かりとして、1985年1月にジョージア州アトランタ郊外に新たしい事務所を設立、そして同年末に『グロックUSA』を設立、翌86年1月には輸入許可が下りてアメリカでの販売が本格的に始まりました。

「窓からアメリカンドリームが見えるぜ・・・」

と、キューバ葉巻をくゆらせながら(想像)アメリカでの成功を確信するガストン氏とグロック17。

しかし、アメリカ国内において彼らを待ち受けていたのは予想だにしないバッシングの嵐だったのです・・・。

 「あの銃、プラスチック製だから空港の金属探知機やX線検査機に映らないんだぜ」
「えっ?じゃあ飛行機に持ちこめんのか?」
「テロリストやハイジャック犯に餌与えるようなもんじゃん」
「グロック社はテロ御用達銃を作る危険な企業だ!」

そう、今や都市伝説にまでなった「グロック空港フリーパス論」という事実無根の噂拡散事件です。この風評被害はマスコミによる連日の報道も加わり全米騒然!グロック社は袋だたき&大炎上となってしまいます。グロックはもちろんフレームや内部パーツなどに金属を使用しているので金属探知機には引っかかりますし、ポリマーフレームもX線で確認することは可能です。

「あれ?・・・アメリカンドリーム・・・」

更には、ブルース・ウィリス主演の大ヒット映画の続編『ダイ・ハード2』にて、テロリストが使用する銃として登場。「ドイツ製のグロック7」「X線に映らない」『空港警備員の給料全部ブッこんでも買えない」といった都市伝説を前面に信用するピュアさと勉強不足で書かれたシナリオが採用され、誤解は一気に世界レベルへと拡大したのです (17だし、オーストリア製だし、価格も高くない)。

ガストン氏とグロック17は謂われ無きバッシングの嵐に流石に凹んでしまいます。当のグロック17は、「ダサくて安っぽい」という只でさえ泣きそうな悪口を言われた挙げ句に、今度は「ギャラ高めの犯罪者」の烙印を押されたものですから、心ならぬファイヤリングピンが折れるほどのショックを受けるのです・・・。

やがての雪解け、大逆転そして大勝利!!

しかし、グロック17の性能の良さとガストン氏の地道な努力を神はちゃんと見ていました。今回の報道が新参者への偏見と勝手な憶測による間違いであると認められ、晴れてグロックは汚名返上!すると、長きに渡る事実無根の誤報道や映画で披露されたダメ知識が逆に宣伝効果へと昇華し、品薄になるほどの爆発的な売れ行きを見せたのです。

「サンキュー、ブルース!!見たか!これがウイーン流逆転力じゃい!!」

やがてグロックは、全米の警察や麻薬取締局、国税局や税関など、あらゆる機関から採用されるようになります。1991年初頭のグロック社の発表によると、総出荷数が35万丁、公的機関の採用数が22万丁にも伸びるという、アメイジングな売り上げを樹立したのです。

バリエーションも、フルオート機能を搭載したグロック18、コンパクトモデルのグロック19、超コンパクトモデルのグロック26など、どんどん増えていき、ポリマーフレームピストルの代名詞として大活躍。その勢いは今後も衰えることはないでしょう。

 

ポリマーフレーム時代の到来

グロックの大成功を皮切りに、各銃器メーカーがポリマーフレームピストルの開発製造に着手し始めます。

まずはポリマーフレーム・ピストル第1号VP70を開発したドイツのH&K社が1993年に開発を始めた『H&K USP』。VP70失敗の教訓を見事に活かした本銃は、世界の法執行機関や特殊部隊などで採用されています。ちなみに『USP』とは、Universal Selfloading Pistol(汎用自動拳銃)の略称です。

USP_Full_Size_45_caliberH&K USP

 

こちらはドイツの名門メーカー、ワルサー社が1996年に発表した『ワルサーP99』。ワルサーPPKに代わるジェームズ・ボンドの愛銃として、1997年の『トゥモロー・ネバー・ダイ』から、2006年の『カジノロワイヤル』、までの4作品に登場して注目されました。

1280px-Walther_P99-JH01ワルサーP99

 

最後はイタリアの名門ベレッタが2004年に発表した『ベレッタPX4』。同社が満を持して発表したポリマーフレームピストル『M9000』の手痛い失敗を糧に、革新的なメカニズムを取り入れ完成させた傑作です。ベレッタの特徴であるオープン型スライドから、フルカバー型スライドに変更されています。

PX4StormベレッタPX4

 

他にも、アメリカが誇る名門S&W社の『M&P40』、ベルギーのFN社が開発した、ボディアーマーを貫通する新型弾を使用する『ファイブセブン』など、様々なポリマーフレームピストルが登場し、一時代を築きました。

全ての始まりは既成に囚われず、好きな物をとことん追求したガストン氏の情熱と、外観への悪評や理不尽なバッシングを跳ね返すグロック17の高い性能でした。正にグロック17はハンドガン新時代の勇者と呼んでも差し障りないでしょう(異論は認めます)。

では、最後に恒例の教訓

批判を糧に出来なければ新たな試みなど出来ない
叩かれても誤解されても情熱と技術があればやがて雪は解ける

 

投稿者:ToyGun.jp編集部