PICK UP!【このGunに歴史あり】第3回・勇者グロックとポリマーフレームピストルたち:前編

2016年07月05日

企画

Glock23オーストリア、ウイーン近郊より道は始まる

ポリマーフレーム・オートの先駆者にして名作として今や世界中の法執行機関や軍で採用されている『グロック(Glock)』ピストル。
しかし、その道のりは決して順風満帆なものではなかったのです。ではまず「ポリマーフレーム」について簡単なご説明を。

【ポリマーフレームとは?】
ポリマーとは、化学的には同種の小さな分子が多数結合し、構造単位の繰り返しを経て構成される分子、あるいはそれからなる物質『重合体』の事であり『高分子化合物』とも呼ばれている。しかしこの場合は合成樹脂(強化プラスチック)で製造された銃のフレームを指す

金属加工にくらべて大きなエネルギーを必要とせず、多少形状が複雑なパーツでも短時間で大量成形が可能なため生産性は非常に高い。また経年劣化しにくいので耐候性・整備性もよく、金属と異なり熱伝導性が低いため、射手が火傷や凍傷を負う心配がない。

 このポリマーフレーム製ピストルの第1号はH&K社が1970年より生産を開始した『VP70』ですが、引き金が重い、反動が大きく命中精度が低いという欠点により大コケしてしまいます。

smg3416-1H&K VP70

「ワシならもっと上手くやってやんよ!」

オーストリアはウイーン郊外にある軍事用品製造会社「グロック社」のオフィスで、創設者ガストン・グロックは少年合唱団よりも大きな声でそう叫んでいました(推測)。射撃を趣味とするガストン氏はかねてよりポリマー樹脂という素材に目を付けていて、念願である銃器製造において採用したいという野望を持っていたのです。

1963年に創設されたグロック社はドアノブ作りからコツコツ始め、ナイフやベルト、折りたたみシャベルなどの軍事用品を手掛けるまでになっていましたが、3度のウィーン風カツレツより銃と射撃大好きのガストン氏は

「てっぽう作りてえぇぇぇぇぇぇ!!!!」

という思いがMAXに達していたのでした。

そして、VP70の登場(そして不評)から10年の歳月が流れた1980年頃よりグロックピストルの製造が開始されました。何を隠そう(別に隠してはいなかったようですが)グロック社はプラスチックと金属の成形に定評があり

銃大好き創設者+卓越したプラスチック成型技術=ポリマーフレームピストル

という必然の計算式が見事に成り立つこととなるのです。

既成に囚われず、そしてコツコツと

グロック社は今まで銃器開発の経験がありません。しかし、銃と射撃が3度のグラーシュ(ウイーン風牛肉の煮込み)より大好きなガストン氏の熱意は鉄もプラスチックも溶かし、経験がないからこその既成に囚われない斬新なアイデアを盛り込むことが出来たのです。そして、軍の新制式拳銃トライアルに参加。試作品を持ち込んで指摘されればそこを直し、また持ち込んでの繰り返しを続けました。

更には軍や警察関係者の率直な意見を参考にするなど、ドアノブ作りからのし上がった地道な努力の積み重ねを活かし《好きこそものの上手なれ・最上級ver.》を発動したガストン氏の成功はもう目前まで来ていたのです。

そして1982年。遂に完成した試作品は軍に提出され、極端な気温変化での動作テストや様々な耐久性テストなど、非常に厳しいトライアルテストを見事にクリア!翌1983年にオーストリア軍の制式拳銃に採用されます!(拍手)。

そのポリマーフレームピストルは『グロック17』として自国のみならず、スウェーデン軍やノルウェー軍、そしてカナダや西ドイツの特殊部隊に採用されたのでした。因みに『17』というナンバーの由来ですが当時としては多い装弾数をアピールするため、発売時に取得した特許の数、採用に至るまで改良を重ねた回数などなど、色々と諸説ありますが真相は藪の中でございます。

Glock_17グロック17

ポリマー樹脂のメリットである、熱伝導性の低さが氷点下や灼熱地帯などの任務において有効とされるなど、グロック17は瞬く間にヨーロッパを中心に爆発的な普及を見せました。

しかし、一方で金属製の銃への信頼と愛着が深い層には「オモチャかよ」、「形ダサすぎ」、「プラモデルってことじゃんw」などなど、主に外見をディスられ17が深く傷ついてしまったのも事実です。

しかしウハウハのガストン氏、「アンチなんて気にすんな17、お前さんは最高なんだ、新時代の覇者なんだメーン」と、全力でフォロー。その甲斐あってか17は『ダサくて安っぽい奴』という批判にも「俺は中身で勝負なんだバカヤロー!」と身をもって証明し、快進撃を続けます。

そうなると、ガストン氏と17の次なる舞台は銃大国アメリカ。しかし、意気揚々と世界最大のマーケットに乗り込んだ彼らを待っていたのは、今や都市伝説と化した風評被害だったのです・・・。

後編へ続きますよ

投稿者:ToyGun.jp編集部